ストーリー

その男、草薙幹夫は呟くようにそう語る。

・地方都市南甲。
7年前、後に「大災害」と呼ばれる大地震によって多くの犠牲者と共に壊滅したこの街は、巨大企業クサナギの包括的復興処置により、 僅か2年で奇跡的な復興を遂げる。
以後、事実上クサナギの支配下で急速に近代的な発展を続ける南甲にかつての面影はなく、雲に届かんばかりに高く聳え立つクサナギ本社ビルが、この街の象徴として鎮座していた。
「大災害」直後の南甲には、低温化現象や地震など、その他様々な異変が起こり続けていたが、最も顕著にその異様性を現していたのが、局地的な低気圧である。大災害後の南甲には幾層にも重なる雨雲が常に停滞し、絶え間なく雨を降り注ぎ決して止む事は無かった。
諸々の異変が落ち着き、7年を過ぎた今でさえ雨は降り止むことを知らない。
それはまるで、この街の有り様に嘆き悲しむ涙のようにも思えた。
その狼狽を聞きながらも、この街は新たなる変化を求め、その姿を徐々に変えていくこととなる。

そして、西暦2024年。
この街は新たな脅威に遭遇する。マガツカミと呼ばれる正体不明の存在、人のなせる業か、あるいは猛獣の類か、夜な夜な頻発する殺人事件は人々を恐怖に震撼させていた。まるでヒトの原型をとどめおらず、喰い散らかしたかのような惨殺死体と、殺人現場に残された奇妙な痕跡、そしてその現場を目撃したという証言。
あるものは「空を飛ぶ化け物」と称し、またあるものは「大男のような人間」と言った。そのどれもが現実味を帯びておらず、それらの事件解決の糸口を掴むものでも無い。ただ怪しげな噂だけが人々の間を駆け抜けていった。

物語の主人公、時任将路はこの街で平凡な生活を送っていた。この街に住んで生活をしているという以外に特別これといった特徴もない学生だ。 降り止まぬ雨が変わらないように彼の人生も変らず続いていくように見えたが、ある日の夕刻それは根底から変化していくのであった。 全くの偶然から、マガツカミと遭遇し襲われる将路。あわや殺されるというところを、謎の少女の登場によりその命を救われるが、同時に「自らを生かすため」と、バインドという契約行為を結ばされる。その瞬間、彼らの命は一体化し、アーミット・ケルベルスとして再生する。
真紅の光を、まるでローブのように纏った漆黒の身体と、巨大な左腕、仰々しい爪が化け物達を屠りながら次々と殲滅させた。
獣を思わせる身のこなしで降り立ち、闇の中に劈く程の雄たけびを轟かせた。
それは新たな命の産声……そして、永遠に続く慟哭だった。

金色の瞳を持つ少女「藍」。彼女と否応なしにバインドさせられた将路は、日常が刻々とひび割れていくことを実感していく。
レイリアという、限りなく人間に近い姿を模しながらも人間ではない存在と、異形化する彼の左腕。
飛躍的に向上した心肺能力・聴力・視力。頭を締めつけられるような頭痛、たびたび耳を襲う幻聴、不可解な夢……。
そして、夜な夜な繰り返される怪物との戦い。

そして、将路達の日常は誰しも予想をしなかった形で崩壊していくのだった。
絡み合う陰謀と思惑の河に流されながら、将路と藍は死と罪に彩られた路を歩み続けざるをえなくなる。
失い、傷つき果てた末に、2人は縛された運命を切り離すことが出来るのか……?


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